2016年9月14日水曜日

第46回「女性作家を読む会」のお知らせ

下記の通り、第46回「女性作家を読む会」を次の通り開催いたします。

土曜日の朝早くからの時間帯で恐縮です。どなたでもご参加頂けます。
ご関心がおありの方は、配付資料など準備の都合上、下記メールアドレスのコーディネーター(西尾)までお知らせ下さい。お手数をお掛けしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

coquelicot_hj2004/yahoo.co.jp  (「/」を@にご変換下さい)

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日時 2016年9月24日(土)10:00 -12:00


場所  跡見学園女子大学 文京キャンパス 1号館3階 小会議室


司会 :吉川佳英子(京都造型芸術大学)

10:00-11:00  岡部杏子(早稲田大学)

「ポスト・ロマン主義の女性詩人たち ルイザ・シフェール(1845-1877)を中心に」

 ルイザ・シフェール(Louisa Siefert, 1845-1877)は、19世紀半ばのリヨンに生まれ、32歳で早逝した女性詩人である。彼女の名は、日本ではまだほとんど知られておらず、欧米でも先行研究は数少ない。しかし、ルイザは、詩集『失われた光』(1868)で鮮烈なデビューを果たし、 『第二次現代高踏詩集』(1869-1871)に4篇、『第三次現代高踏詩集』(1876)に6篇を寄稿するなど、19世紀後半に活躍した希有な女性詩人のひとりである。このように、彼女が活動したのは、比較的女性詩人に寛容であったロマン主義の時代に比して、ミゾジニーの傾向が強いと見なされる時期である。にもかかわらず、なぜルイザは多くの読者を獲得し、時代の本流を築いた男性詩人からも受け入れられたのだろうか。
 この問いに答えるために、本発表では、まず、ルイザ・シフェールの生涯と作品を概観する。次に、『失われた光』を主な対象とし、ルイザの詩の独自性を検証する。最後に、『第二次現代高踏詩集』、『第三次現代高踏詩集』に掲載された詩を取り上げ、同詩集に掲載された他の女性詩人の詩と比較しつつ、ルイザの詩の受容の一端を明らかにする。


11:00-12:00  西尾治子(跡見学園女子大学)

「ジョルジュ・サンド(1804ー1876)はダーウィンを否定したか? 『祝杯』にみる科学とジェンダー」

 18世紀の比較解剖学の発達により女性特有の身体器官が発見されると、古代ギリシャ以来、長く信じられてきたアリストテレスに代表される「ワンセックス・モデル論」は「ツーセックス・モデル論」へと変容し科学分野におけるジェンダー観は女性蔑視の傾向を強めていった。19世紀に入ると学問分野で大きな刷新が起こる。「自然哲学者」という総合的な呼称が消え「科学者」という新造語が誕生、哲学者と科学者が袂を分かつのである。以降、科学が隆盛を極めるようになり、哲学派は科学万能主義派を強く批判した。こうして、科学か哲学か、物質主義的マテリアリスムスか唯心論的イデアリスムスかの二項対立する思想潮流がフランスの知識人界を席巻することになる。
 本発表では、押し花や蝶の採集にも情熱を傾けたジョルジュ・サンドと自然科学との結びつきを概観したあと同時代の博物学者ジョフロワ・サンチレールおよびダーウィンの『種の起源』とサンドの科学思想との関連性を明らかにする。次いで、魂か科学かの問いに解を示していると思われる中編小説『祝杯』を取り上げ、科学、哲学およびジェンダーの視点からテクストの読みの可能性を探る。ジョルジュ・サンドの多くの作品は、女性が決して男性に劣る「ツーセックス・モデル」でも「第二の性」でもなく、往々にして男性より優れた知性と人間性を有している場合があることを、多様な文学的戦略を駆使し徹底して提示し続ける。病に倒れ死を間近にした伴侶アレクサンドル・マンソーに捧げた『祝杯』の「読み」を通し、二項対立の「出口なし」の世界で人類の未来を見据えた第三の道を示唆する、果敢な女性作家ジョルジュ・サンド像を再考したい。

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